DVから自分や子どもの身を守る方法

DVから自分や子どもの身を守る方法
DVから自分や子どもの身を守る方法

配偶者から受ける暴力「DV(ドメスティック・バイオレンス)」。多くの方がこのワードについて認識していることかと思います。
しかし、肉体的な暴力をふるわれるだけがDVではありません。DVにはさまざまな種類があり、自分だけでなく子供や家族に被害が及ぶケースもあるのです。
このページでは、DVの種類について解説しながら、DVかもしれないと感じたときに取るべき具体的な対策についてお伝えしていきます。
自分がパートナーから受けている苦痛が「DVなのか分からない」「DVかもしれないけど、どうすれば良いか分からない」「報復が怖くて何もできない」このような方は、ぜひ最後まで読んでご自身の身を守る選択をしてください。

※この先の文章は、過去にDVを受けた方にとって辛い内容も含まれます。フラッシュバックや動悸などの体調不良を起こしそうな場合は無理をして読まずに、ご自身の心の休養を優先されてください。
また、現在DVを受けている方、身の危険を感じている方は、近所の交番へ駆け込む、自ら通報するなどでも構いません。迷わず第三者に助けを求めてください。

DVの種類

相手から直接手を挙げられたり殴られたりするだけが、DVとは限りません。
DVには大きく分けて6つあり、これらのうち1つでも当てはまる行為があれば、自分はDVを受けていると疑うべきです。

身体的DV (身体的暴力)

最も典型的なDVが身体的暴力です。殴る蹴る、髪を引っ張る、首を絞める、物を投げつけるなど、肉体に直接暴力を振るわれるのが特徴で、傷が残ることも少なくありません。
身体に傷やアザが残るため、他の人から発見されやすいDVですが、服を着ていると見えない部分を殴ったり跡が残らない程度に傷づけられたりするケースもあり、気づかれくい場合も多いです。

精神的DV(精神的暴力・モラルハラスメント)

言葉や態度による精神的な暴力もDVのひとつです。最近では「モラハラ」という言葉で広く知られるようになりました。暴言を吐く、大声で怒鳴る、人間性を否定したり罵ったりするなど、見下すような発言をする行為があたります。
機嫌が悪いときに無視したり謝罪・反省を強いたりする行為も精神的DVです。

モラハラは、特に第三者が関与していない密な家庭内で行われるほか、肉体的暴力のように目に見えないため、気づかれにくいのが特徴です。
直接的な暴力ではないため、DVを受けている側も長い間気づかないケースも多くあります。
また、モラハラはエスカレートする事例が多いです。DVを受けた側は逃げ場がなく、精神的に追い詰められていきます。放っておくと精神疾患を発症してしまう被害者も多いため、いかに早く気付いて問題に向き合えるかが大切です。

経済的DV(経済的暴力)

生きていく上で、お金を使うことは必要不可欠です。ですが、経済的DVでは金銭を使うことを徹底的に制限し、金銭を奪うことで相手を支配下に置き、監視します。
金銭的自由を奪い、果ては生きるための力をも奪うDVです。
例えば、配偶者に仕事をさせない、仕事を辞めさせて専業主婦(主夫)になることを強要する、
生活費を渡さない、自由に買い物ができるお金を渡さない、お金の使い道を過度にチェックして苦言を呈する、相手の金を無断で使用する、などが挙げられます。これも第三者からは見えにくいため気づかれにくく、被害者自身もDV被害者であることに気づきにくいのが特徴です。

性的DV(性的暴力)

たとえ夫婦やパートナーであっても、同意のない性行為は暴力にあたります。
また、避妊に協力しない、中絶を強要するなども性的DVのひとつです。
性的DVと呼べる行為はさまざまで、パートナーが嫌がっているのに過剰な頻度の性行為を強いる、特殊な性的嗜好を強要する、写真や動画などを無理やり撮影するなど、精神的な被害を受ける行為が多いです。
性的DVは第三者に相談しにくいことから、泣き寝入りする人が多い傾向にあります。しかし、精神的な被害を受けてしまうと回復には多くの時間がかかります。性的DVを受けているかもしれないと感じたら、勇気をもって専門機関へ相談しましょう。

社会的DV(社会的暴力)

社会的DVとは、身の回りの人間関係の断絶を強要する暴力です。家族や友人、職場の知り合いなどとの交流を制限、関係の断絶を要求して、自分の支配下に置こうとします。
メールやSNSを常に監視したり、手帳や持ち物を細かくチェックしたりする行為も社会的DVに相当します。
また、上記で述べた肉体的・精神的DVの加害者は、社会的DVもあわせて行う場合が多く注意が必要です。周囲との関係や連絡を断たれた状態で暴力が行われると、被害者は誰にも相談できず、逃げられずに追い詰められていきます。
自分の置かれた異常な状況に、立ち向かう気力も奪われてしまいかねません。
度を超えた束縛や異常な執着など、パートナーに少しでも違和感を覚えたら、早いうちに解決方法を探しましょう。

子供を使ったDV

子供のいる家庭でDVが行われると、本人のみならず、子供もDV被害者になってしまう可能性があります。
子供の前で暴力を振るったり子供の前で罵倒したりする行為は、子供を使ったDVにあたりますし、自分自身の不満を周囲に当たり散らし、子供を虐待する行為はもってのほかです。
「児童虐待防止法」では、家庭内DVを目撃させることも虐待にあたると定義されています。
虐待を受けた子供や暴力を目撃して育った子供は情緒不安定やうつ症状、不登校、いじめ、自傷行為、摂食障害など、精神的ストレスからさまざまな問題行動や精神疾患を患う可能性が高いことが報告されています。
他にも、配偶者から子供を取り上げる、「子供に危害を加える」など子供の存在を利用して脅す行為も子供を使った卑劣なDVです。

DVから身を守る対策

暴力や暴言、異常なまでの支配による辛い毎日から少しでも早く抜け出すためにも、以下の行動を心に留めておきましょう。
DVを我慢していても、解決することはありません。また、当人同士の話し合いだけで、相手が改心して暴力を振るわなくなる可能性も非常に低いです。
「DVかもしれない」と感じたら、現実をしっかりと受け止め、1刻も早く行動を起こすことが大切です。

DVを受けていると認める

まずは、自分は何らかの暴力を振るわれている犠牲者だと自覚することが大切です。DV被害者の多くが「自分の行動や言動が悪かったから…」「もっとこうしていれば殴られず(怒鳴られず)に済んだかも」と、自分を責める傾向にあります。
断言しますが、あなたは何も悪くありません。悪いのは暴力で人を支配しようとする加害者のほうです。
また、DV被害者の中には「相手が暴力を振るった後に泣いて反省していた、謝ってくれたから、もうこの先はこんなことはないだろう」と許してしまう人が多くいます。
暴力をふるった後に優しい行動をするのはDV加害者の典型的なパターンです。一度許してしまうと、ますます暴力が過激になっていく事例は往々にしてあります。

また、精神的DVや社会的DVを受けている人の場合、直接的な暴力ではないためにDVではないかも?と思ってしまうことも少なくありません。
肉体的な苦痛はもちろん、恒常的に精神的苦痛を受けていたら、それは何らかのDVである可能性が非常に高いです。
パートナーの異常性を認めたくない気持ちはわかりますが、自分、子供のいる方は子供の未来を考えてみてください。
家族や友人など自分の大切な人たちまでも悲しませないためにも、被害者である現実を認めて次の行動を起こしましょう。

DVの証拠を集める

身体的な暴力を受けたなら、傷やあざなどを画像に残しておく、医師の診察を受けるなど、証拠集めをしておきましょう。精神的なDVであれば、言われた暴言を日付とともにメモする、叱責されている様子を録音するなどが効果的です。
配偶者と婚姻関係にある場合、DVを理由に離婚を切り出したいけれど、報復が怖くて言い出せない人も多くいます。また、暴力のあった事実を否定して離婚に応じない加害者も多く、簡単には合意に至りにくいのが実情です。
DVが原因で離婚しようと考えているなら、当人同士だけでの話し合いは危険です。家庭内の閉ざされた状況下では、次なる暴力につながりかねませんし、言いはぐらかされてうやむやになってしまうこともあります。
必ず、弁護士などの第三者を入れて話し合いをつけましょう。

DV防止法による保護を受ける

DVを受けている人がこれ以上身体的・精神的に危害を加えられないように、裁判所が配偶者や交際相手に対して出す命令のことです。
DV防止法のもとで保護を受けることによって、これ以上の被害を受けないようにできます。
DV防止法による命令は5つです。「被害者への接近禁止命」「被害者への電話等禁止命令」「被害者の同居の子への接近禁止命令」「被害者の親族等への接近禁止命令」「被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去命令」で、地方裁判所へ申立書を提出することによって準用されます。
暴力が著しい、報復を受けている、または受ける恐れが高い場合は、この保護制度を利用しましょう。

警察を呼ぶ

配偶者からの暴力による身の危険を感じたら、警察を呼ぶか警察署に相談しましょう。被害届を出しておけばDVの証拠になりますし、相手に対し刑事責任を追及する上でも有効です。
被害届を出したからといって、必ず相手を逮捕してくれるとは限りませんが、暴力を振るわれた状況によっては即時逮捕もあり得ます。
また、警察署にはDVを専門とする相談窓口があり、接近禁止命令の手配や避難シェルターなど、専門機関の紹介を行ってくれます。
必ず何らかの支援が期待できるので、「家庭内、カップル間の問題だから警察は取り合ってくれない」と決めつけず、自分の身を守ることを優先にして、勇気をもって相談するようにしてください。

専門機関に相談する

警察以外にも内閣府の「男女共同参画局」が運営するDV相談や専門の相談所があります。
警察へ行くには気が引けるといった場合は、このような機関のサポートを受けましょう。
相談員に話すことによって適切なアドバイスをもらえますし、話を聞いてもらうことで気持ちも落ち着き、冷静に対処できるようになります。
「DVかもしれない」と思ったら、1人で抱えず、必ず第三者に助けを求めてサポートを受けるようにしてください。